「野菜中心の食事」の必要性とカンタン実践ガイド
野菜中心の食事が健康に良いことは広く知られていますが、厚生労働省が推奨する1日の摂取量350gを達成できている人は全体の3割に留まっています。健康意識が高まる中でも、野菜不足は依然として解消されていないのが現状です。
この記事では、野菜中心の食事の重要性について詳しく解説し、野菜中心の食事を簡単に実践できる方法を紹介します。
たくさん食べている「つもり」でも野菜不足!
野菜中心の食事が健康に良いことを理解していても、十分な量が具体的にどれくらいなのかを把握している人はどの程度いるでしょうか。
厚生労働省が実施している「国民健康・栄養調査」をみると、平成22年調査では、生活習慣病予防・改善のための取り組みとして「野菜をたくさん食べるようにしている」と回答した人(30歳以上)は、男性約45%、女性約60%にのぼります。
しかし平成30年の同調査での野菜類平均摂取量を見ると、成人男性で約290g、女性で約270gとなっています。特に20~30歳代は男性で約260g、女性で約240gと成人の平均より約30gも少ない量になっています。
※引用 厚生労働省e-ヘルスネット 野菜、食べていますか?(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-015.html)
これらの調査結果から、多くの人が野菜の摂取量を過大評価していることが明らかになりました。実際の摂取量は、自己認識よりも低いケースが多いのです。
この現状を改善するためには、単に「野菜を含む食事」を心がけるだけでは不十分かもしれません。むしろ「野菜中心の食事」へと意識を変えることが望ましいでしょう。このアプローチにより、必要な野菜摂取量を達成できる可能性が高まります。
野菜摂取の健康効果を探る研究
野菜は、食物繊維、カリウム、ビタミンCなど栄養素の重要な供給源です。また、カルシウム、マグネシウム、鉄分、葉酸、パントテン酸なども含まれており、多くの栄養素を摂取できます。野菜の栄養価については、広く認知されていますが、さらに意識を高めるために、野菜摂取と健康に関する研究結果を紹介しましょう。
野菜摂取と健康リスクの低下
アメリカのハーバード大学が行った大規模な研究では、1日約400gの野菜を摂取する人が、160gの人に比べて死亡リスクが低いことがわかりました。特に葉野菜やニンジンなどのビタミンCやベータカロテンを含む野菜が推奨されています。
体重管理
日本の40〜60代の男女を対象にした研究では、研究開始から5年後と10年後に食事調査を行い、同時に5年から10年の間の体重変化も調べました。その結果、野菜の摂取量が100グラム増えるごとに体重が約25グラム減少する傾向が示されました。特に、黄色や赤色の野菜、またネギ属の野菜(例:たまねぎ)で、体重減少との関連が顕著でした。
将来の摂取量予測
1995年から2040年までの予測では、現在の減少傾向が続くと、野菜摂取量がさらに減少する可能性が示唆されています。目標量である350gまで増加すれば、健康上のメリットを享受できる可能性があります。
※出典 農林水産省:健康で持続可能な食生活の実現に向けて エビデンスに基づく提案(https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/attach/pdf/iyfv-122.pdf)を加工して作成
野菜のたんぱく質にも注目
日本人の栄養摂取において、野菜不足だけでなく、たんぱく質の摂取不足も課題となっています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、男性のほとんどの年齢層でたんぱく質摂取量が目標量に達しておらず、特に女性では20〜30代や50代での不足が目立ちました。
しかし、一方で肉類の消費量は増加傾向にあります。
肉類摂取量、10年間で24.2%増加
〜中略〜 10年前の平成21年と比較すると、いずれの年齢階級も増加し、全体では21年比24.2%増となった。引用:農畜産業振興機構(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001546.html)
肉類摂取量の増加により動物性脂質の摂取量は増加傾向にありますが、魚介類の摂取量は減少し続けており、動物性たんぱく質の摂取量としてはどの年代も減少を続けています。さらに、植物性たんぱく質の摂取量も減少しており、たんぱく質の摂取不足が助長されています。
脂質の過剰摂取に注意しながらたんぱく質摂取量を増加させるために、植物性たんぱく質がおすすめです。
出典:国立健康・栄養研究所「栄養素等摂取量|健康日本21(第二次)分析評価事業」(https://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/eiyouchousa/keinen_henka_eiyou.html)
植物性たんぱく質を補うには大豆が代表的な食材ですが、実は野菜も優れた供給源です。野菜中心の食事を意識することで、植物性たんぱく質の不足を補うことができます。
例えば、生のブロッコリー100gは、つぼみ部分7〜8房程度に相当し、5.4gのたんぱく質が含まれています。また、枝豆50gにも約6gのたんぱく質が含まれており、一度の食事で摂取可能です。このように、野菜は食物繊維、カリウム、ビタミンだけでなく、たんぱく質も摂取することができる優れた食材なのです。
※文部科学省食品成分データベース(https://fooddb.mext.go.jp/index.pl)より
この多面的な栄養価値は、野菜摂取の重要性を再確認させ、積極的に取り入れることの大切さを教えてくれます。
ここまで、野菜中心の食事の必要性について詳しく説明してきましたが、これを実現するためには、日々の食事にどのように野菜を取り入れるかがポイントとなります。次に、野菜中心の食事を簡単に実践するための具体的な方法を紹介します。
無理なく簡単に!野菜中心の食事実践ガイド
忙しい毎日の中で、野菜を準備して調理することは、面倒に感じてしまいますよね。野菜中心の食事を習慣化するためには、無理をしても続きません。そこで「簡単」と「美味しい」を両立させた、続けやすい方法を紹介します。
簡単な目標設定
いきなり野菜中心の食事へシフトするのは難しいので、まずは小さな目標を設定しましょう。「毎食1品は必ず野菜を食べる」といった具体的な目標を設定し、その達成を記録することで、モチベーションを高めることができます。特別な努力を必要とせず、日常生活に簡単に取り入れることができるため、習慣化しやすいです。
コンビニで昼食を済ませるときも「おにぎり+唐揚げ」でなく「おにぎり+野菜の煮物」、「パスタ+ヨーグルト」でなく「パスタ+野菜サラダ」を選ぶといった、小さな積み重ねが大切です。
野菜摂取目標量350gの目安
1日に必要な野菜の摂取量350gは、実際にはどのくらいの量なのでしょう?
以下の写真で示したのは、代表的な野菜素材の70グラムの目安量。小皿1皿分の野菜量を70グラム、1日5皿分で、1日に必要な野菜の摂取量を350gとなります。
※写真出典:農林水産省 特集 野菜をもっと食べよう!(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1511/spe1_01.html)を加工して作成
生の野菜では、食事での必要量をイメージしづらいと思いますので、野菜料理の例を紹介しましょう。
例えば、ほうれんそうのおひたし(70g)+きんぴらごぼう(70g)+野菜サラダ(70g)+野菜いため(140g)で、1日の必要量350gになります。1回の食事ですべて摂るのは難しいかもしれませんが、朝食に野菜サラダ、昼食にほうれん草のおひたしなどと分けて食べることで、目標に到達できます。
※写真出典 農林水産省:野菜を食べようプロジェクト(https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/2ibent.html)を加工して作成
食材の準備編
■ カット野菜や冷凍野菜を活用
カット野菜は洗浄や切る手間が省け、忙しい時でも簡単に摂取できます。コンビニでも手軽に手に入るようになり、さらに便利になりました。また、煮物や汁物への利用を目的とした加熱済みカット野菜は、具としてよく利用される根菜類を短時間で加熱加工し、野菜の持つうまみを閉じ込めています。根菜類を、少しずつ種類を多く使いたい煮物や豚汁などに便利です。
冷凍野菜は長期保存が可能で、様々な料理に活用できます。特に葉物野菜は、冷凍しておくとかさばらず、便利です。最新の冷凍技術により、市販の冷凍野菜は美味しく、栄養価も新鮮なものとほぼ同じなので、ぜひ上手に活用しましょう。
■ 旬の野菜を冷凍保存
旬の野菜は栄養価が高く、価格が安いので、休日などにまとめて購入し、冷凍しておくのも良いでしょう。
【ポイント】
- 熱伝導のよい金属製(アルミ・ステンレス)のバットやトレーを使うことで、素早く凍らせることができ、味や食感、おいしさが保たれます。冷凍庫の扉を開閉しない時間帯に冷凍すると効率的です。野菜の冷凍保存期間はおよそ3週間です。
- ほとんどの野菜は生のまま冷凍可能ですが、一部の食材には注意が必要です。ほうれん草や山菜、タケノコなど、下茹でしてあく抜きをする必要がある野菜は、茹でてから冷凍してください。また、レタスなどサラダ用の葉物野菜は、冷凍すると食感が悪くなるため、冷凍保存は避けましょう。
※出典 農林水産省:簡単な「冷凍ワザ」で、野菜を新鮮に!おいしく!(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan/articles/2203/spe7_03.html)
料理編
■ 電子レンジを活用
野菜中心の食事を習慣化したいけれど、料理が面倒という方は、電子レンジを活用しましょう。
例えば、彩り豊かなにんじん、ブロッコリー、かぼちゃなどの緑黄色野菜を電子レンジで調理した温野菜サラダは、栄養満点で、日常的に取り入れたいメニューです。飽きが来ないように、ドレッシングのバリエーションを豊富に用意すると良いでしょう。
【ポイント】
- 野菜は均等な大きさにカットすると、電子レンジで均一に加熱されやすくなります。電子レンジ専用の「スチームケース」や「レンジ用蒸し器」を使用することで、蒸気を利用して均一に熱を伝えることができます。
- 根菜と葉野菜を一度に加熱するとムラができやすいため、加熱時間の調整や野菜の切り方を工夫することが重要です。例えば、硬い野菜を下に、柔らかい野菜を上に重ねると良いでしょう。
- 電子レンジでの過加熱は、野菜が乾燥してしまう原因となります。加熱しすぎないようにし、必要に応じて少しずつ加熱時間を調整してください。
■ 手作りドレッシングを活用
手作りというと面倒に思われがちですが、実はとても簡単です。少量であれば、食べる直前にミニ泡立て器やスプーンで混ぜるだけで美味しく作れます。たくさん作りたい時は、ビン型の密閉容器に調味料を入れてシェイクするだけで、しっかりと混ざった手作りドレッシングが完成。メモリ付きのビンを使えば、計量カップも不要で、後片付けが楽になります。
市販のドレッシングは、味に飽きてしまいやすく余らせてしまった経験はありませんか?手作りドレッシングなら、少量ずつ、様々な味が楽しめます。基本の調味料やオリーブオイル、ごま油などは、どの家庭でも常備していると思いますので、特別な材料も必要ありません。
醤油や味噌を使った和風テイスト、豆板醤やニンニクを使った中華風、レモンやはちみつを使ったイタリアン風など、その日の気分や料理に合わせて自由にアレンジ。さらにごまやハーブ、黒こしょうなどの風味をプラスすれば、バリエーションの幅が広がります。
特にごまは、様々な調味料と相性が良く、和風、中華、洋風など、どんな料理にも活用できます。すりごま、いりごま、練りごまなど、種類も豊富で、ごまあえやトッピングなど、サラダ以外にも簡単に使える食品なので、野菜中心の食事にぴったりです。さらに栄養価も高く、野菜との相乗効果を期待できます。
【ポイント】
手作りドレッシングは保存料を使わないため、長期間の保存は避けてください。保存する場合は密封容器に入れ、早めに使いきりましょう。
「野菜中心の食事」の必要性とカンタン実践ガイド:まとめ
食事は私たちの生活の基盤であり、日々の選択が未来の健康に直結します。
野菜は食物繊維、ビタミンやミネラルに加え、たんぱく質やその他の重要な栄養素も含まれており、体調を整えるために欠かせません。栄養バランスの取れた食事は健康維持の鍵であり、野菜中心の食事がその土台を築きます。
忙しくて野菜料理を作る時間がない方でも、冷凍野菜やカット野菜、電子レンジを活用すれば、簡単に野菜中心の食事を実践できます。長期的な健康を手に入れるため、野菜を積極的に取り入れる習慣を身につける努力を始めてみましょう。
この記事を書いた人